コンパクト版
痔瘻の男(「病草紙」から)
■病草紙(やまいのそうし)
 
 病草紙は、平安時代末期に描かれたとみなされる絵巻物。絵、詞書ともに作者は未詳。かつては1巻の絵巻として伝わりましたが、現在は場面ごとに切り離されています。簡単な説話風詞書に一図の絵を添え構成された、当時の種々の奇病や治療法など風俗を集めたものです。国宝9段など各地に分蔵。
 絵には、風病の男、小舌のある男、二形(ふたなり)の男、眼病の男、歯の揺らぐ男、
尻に穴多き男(痔瘻の男)、陰虱(つびじらみ)をうつされた男、霍乱(かくらん)の女、口臭の女などがあります。
 「餓鬼草紙、地獄草紙と同様に平安時代末期の製作とみなされ、ともに「六道絵」を構成していたと考えられています。画面は、苦悶する病人という主題の奇怪さだけでなく、それを見て困惑したり嘲ったりする周囲の人物が描かれており、風刺的な冷やかさも帯びています。この点で単なる標本集のような単調さに陥らず、人間の生々しい存在感を露わに描き出すことができるのです。」(Google Arts Cultureより)

■尻に穴多き男(痔瘻《じろう》の男)(国宝)

(詞書の釈文)
或る男、生まれつきにて、尻の穴
数多ありけり。屎《くそ》まるとき、穴
ごとに出でて、煩《わずら》はしかりけり。

(説明)
萎烏帽子《なええぼし》をかぶった男が、高下駄《たかげた》をはいて、細い腰をまる出しにして、糞をしている。傍らから、若い女が熱心にのぞき込んでいる。詞書によれば、この男、「生まれつきにて、しりのあなあまたありけり」という。そして、「くそまる(排泄《はいせつ》する)とき、あなごとにいでて、わずらはしかりけり」という、いたって厄介な病気をもっていた。が、これは生まれつきかどうかは疑わしいが、多発性痔瘻《じろう》であろうという。
上記は、日本絵巻大成7「餓鬼草紙 地獄草紙 病草紙 九相詩絵巻」(昭和52年3月)より引用

《  》は、ルビです。


痔瘻の男
痔瘻の男(「病草紙」)
国立国会図書館デジタルコレクションから転載

 
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