(詞書の釈文)
或る男、生まれつきにて、尻の穴
数多ありけり。屎《くそ》まるとき、穴
ごとに出でて、煩《わずら》はしかりけり。
(説明)
萎烏帽子《なええぼし》をかぶった男が、高下駄《たかげた》をはいて、細い腰をまる出しにして、糞をしている。傍らから、若い女が熱心にのぞき込んでいる。詞書によれば、この男、「生まれつきにて、しりのあなあまたありけり」という。そして、「くそまる(排泄《はいせつ》する)とき、あなごとにいでて、わずらはしかりけり」という、いたって厄介な病気をもっていた。が、これは生まれつきかどうかは疑わしいが、多発性痔瘻《じろう》であろうという。
上記は、日本絵巻大成7「餓鬼草紙 地獄草紙 病草紙 九相詩絵巻」(昭和52年3月)より引用
《 》は、ルビです。
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痔瘻の男(「病草紙」)
国立国会図書館デジタルコレクションから転載 |