■痔の妙薬
「持病の痔がおこって、苦しくてなりません。」
「それはお気の毒。痔の妙薬を、教えてあげようか?・・・・・・飴の粉を尻に振りかける」
「なんとも簡単なお薬ですが、それで効きますか?」
「あめ振って、じ固まる、といいますからな」

人文書院「江戸の笑い話」 高野澄 編訳から

■吉原
「このころは、久しくお出なんせん。お心変わりか」といふ。
「イヤヤ、心変わりではないが、さんざん痔が起つて、それゆへる来なんだ」。
「それは、さぞ、おこまりなさんしたでござんしよ。殊に出痔の、いぼ痔の、走り痔のと、色々あるさふでござんすが、おまへのは、何痔でござんす」。「おれのは、親仁(おやじ)だ」

(安延五年正月序『島の町』)
作品社「江戸小噺漫歩」興津要から

■素人医者(しろうといしゃ)  談洲楼(だんじゅうろう)作
「お前(まえ)は医者さまの真似(まね)をするが、アノ癪(しゃく)といふものは、どうした物だな」
「ハテあれは腹の内(うち)に一尺ばかりの棒(ぼう)があって、つっぱる。夫(それ)がつかえるのだ。」
「ムヽ聞(きこ)へた、アノ男の痔(じ)は若衆(わかしゅ)の時から@の事でもありそうな物だが、女の痔のあるといふは、どふした事だな」
「ムヽあれは春米(つきこめ)屋Aの隣で壁がくずれるやうなもの」

@男色をする若衆は、尻穴を用いるため、病菌が入って痔の病にかかる者多し A麦米の皮をむいて、白米にする作業を営業する家を、つき米屋、略してつき屋という。搗音の響き近隣甚だしので、その余波といった。

(喜美談語(きみだんご)寛政八年)
平凡社「江戸小咄集 2」宮尾しげを編著から

■痔のいろいろ
「コレ七兵衛、五六日まるきり会わぬ。手紙をやれど返事もなし。外へも出ないのか。どうしたぞ」と言えば、
「イヤこのごろはさんざんだ。じがおこってねてばかりいる」
「それは難儀であろう。早く知れば、こっちによい薬があったものを。シテその痔は出痔かイボ痔か、穴痔か」
「出痔でも穴痔でもない。親父が怒った」

(かす市頓作)
浜田儀一郎訳編著「にっぽん小噺大全」筑摩書房から